「9月1日母からのバトン」樹木希林、内田也哉子著
この本のレビュー記事です。
ネタバレを含みますので、本の内容を知りたくない方は読まないことをおすすめします。
母からのバトン
母である樹木希林さんの想いを、次の世代、次の人へ繋いでいくために。
本の前半は樹木希林さんが関わったインタビューとトークセッション。後半は内田也哉子さんとある4人との対話から構成されています。
9月1日

「9月1日」
ポジティブ、ネガティブなイメージを抱く人。何も感じない人もいるかもしれない。
樹木希林さんがどうしてそこまで「9月1日」への思いを強くしたのかは結局はわからない。
不登校であってもそうでなくても、多少の生き辛さを抱えながら日々を過ごしている人であれば、樹木希林さんの言葉のどれかが自分の胸のつかえを取ってくれるかもしれない。
例えば、
暗闇の中どうしたらいいのかわからないとき。
光なんてないと思い込んでしまっているとき。
長い長いトンネルの中。
自分だけが泥沼から抜けられなくなっているような感覚。
逃げたい。
楽になりたい。
そんなとき、私はあなたになることはできない。
あなたの痛みを取り除くことはできない。
でも、生きていて欲しい。
生きてそこに居てほしい。
生きているだけでいい。
それさえも自己中心的な思いかもしれない。
でも、
昨日と今日は、同じように見えて少しずつ違う。
昨日と今日はずっと続いているようで、実は一瞬一瞬が全くの別物。
だからもう少しだけ生きていて欲しい。
今は元気が無くてもいい。
落ち込んでいてもいい。
どうか生きていて欲しい。
心からそう願う。
先人たちの言葉は、私たちの道を穏やかに照らしてくれている
あまりに詳細にこの本の内容に触れたくないがために、抽象的な表現でしかお伝えできないのが申し訳ないです。
ただこの本を読んだあと、何かを受け取った感覚になったことは強くお伝えしておきたいです。
内田也哉子さんと4人の対話
内田也哉子さんが望んだ4人それぞれとの対話が描かれています。
不登校に関わる人。命に関わる人。文学に関わる人。
それぞれの対話から見えてくるのは、希望であり、扉のようなイメージ。
暗闇から出るための扉、次のステージに行くための扉。
出口としての扉。命をつなぐための扉。
開かないと思い込んでいる扉が開かれる瞬間、人は気づき、変化する。
不登校に悩む人にとっては救いの言葉として、不登校を支える家族にとっては不登校を客観的に見るために役に立つ話が書かれています。
個人の心の問題であり、家族の問題であり、社会の問題でもある。
小さい変化に気づくこと、大きな枠組みの中のことも見てみること。
どちらも重要であり、必要であることだと感じます。
どうか必要な人のもとにこの本が届きますように。
樹木希林さんと内田也哉子さんの祈りが届くことを願っています。
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